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プレキャストで何が変わる?
高見澤の「cv護」を、喜久屋商会が使ってみた

現場の効率化、どう実現する?
人手不足への対応が求められる建設業界で、現場作業の効率化は急務だ。従来の型枠工法に限界を感じていないだろうか?
喜久屋商会が採用したハーフプレキャスト製品「cv護」は、少人数での施工を可能にし、品質を安定させる新たな選択肢となる。型枠作業の省略による工期短縮や、施工時の汚水排出を防ぐ環境メリットも大きい。

「材料費が増えるのでは?」と思うかもしれないが、実際には作業員の削減や重機コストの低減により、総合的なコスト削減が可能だ。狭小地や規制の厳しい現場でも活用しやすく、施工の自由度も高まる。
従来のやり方を続けるべきか、それとも新たな工法にシフトすべきか。今こそ、プレキャスト製品の導入を考える時ではないか。
①型枠作業の限界と2025年問題

喜久屋商会(長野市、原山大輔社長)は昨年、河川工事の現場でハーフプレキャスト製品「cv護」を導入し、省人力化・環境負荷軽減・品質確保を実現した。原山社長は「働き方改革や人手不足、環境配慮を考えると、今後プレキャスト製品の導入は加速するだろう」と語る。
「cv護」は、プレキャストコンクリート製品を残存型枠として現地に設置し、河川内にて中詰めコンクリートを打設することで、護床・根固めブロックを形作るハーフプレキャスト工法の製品だ。

型枠作業は、従来のコンクリート工に不可欠な工程。しかし、組立、固定、打設、解体、清掃といった作業には、最低4人以上の熟練工が必要とされる。大量の高齢技術者が引退するとされる「2025年問題」。労働力不足が深刻化する中で、コンクリート工の従来工法である型枠作業にも変化が求められている。
従来工法について原山社長は「型枠解体後の洗浄で発生する汚水やセメント残渣は現場周辺の環境に負荷をかけないよう注意が必要で、気温や湿度など天候に左右されるコンクリートの養生は、品質確保に限界がある」とし、「環境・品質の面で労力がかかる」と話す。
こうした限界を打破する鍵は、工場で製造され品質が保証されたプレキャスト部材やハーフプレキャスト工法の導入にある。部材を現場に搬入し、簡単に組み立てて施工するだけで、省人力化や環境負荷軽減、品質確保の面で従来工法の問題を解決する。
②人・環境・品質の面で効果を実感
喜久屋商会が「cv護」を導入した土尻川の河川改修工事は、洗掘防止を目的に根固めブロックを設置する工事だった。


現場代理人の小野田学さんは、「渇水期の、短い工期の中での施工。加えて、作業ヤードの確保も難しかった」と振り返る。
作業ヤードの確保が困難で、大型車の通行が出来ない狭い道路に面した場所だったが、軽量で分割式の「cv護」を使用することでスムーズな搬入・設置ができたという。
工場製のハーフプレキャスト部材を現場で組み立てるだけの工程により、従来必要とされた4人以上の人工を大幅に削減。型枠の組立、解体、洗浄といった面倒な工程を省略し、作業員数の削減や工期の短縮を達成した。
環境配慮の面では、型枠の洗浄工程が不要なため、汚水やセメント残渣を生み出さず、河川や地下水への影響を抑えることができた。
原山社長は「川下をとって現場で型枠を組んで打設すると、どうしても型枠清掃の排水が環境負荷になる。プレキャストを使うことで、流域の人や川の生態系に負荷をかけずに工事が進められる」と話す。

品質の安定性も大きな強みだ。従来工法では、気温や湿度の影響で品質のばらつきが出やすいが、「cv護」は工場で残存型枠を製造するため、強度や耐久性が安定する。寒冷地や雨天時の施工でも品質を確保しやすい。
小野田さんは「従来工法だと打設の際にかなり気をつかう必要があるが、cv護だと表面を金ゴテでおさえて終わりなので簡単」と施工性の良さを実感。「誰が施工しても品質よくできる。熟練の技術は必要ない」と話す。

③トータルコストで考える
「cv護」を活用することで、従来工法では見落としがちな隠れた費用を解消することができる。
高見澤は「従来工法の約1.1 倍の材料コストがかかる」とする一方で、型枠の組立・解体・洗浄に伴う人的作業や、重機・ヤードの付帯費用を大幅に削減するため、トータルコストを低減できるという。
さらに、工期短縮によって現場回転率が上がり、プロジェクト全体の管理コストを抑え、短縮された工期は、天候不良など工期を圧迫するリスクの低減にもつながる。

④こんなところにも「cv護」
従来工法が通用しなかった現場条件下で使用できることも、「cv護」の強みだ。
施工ヤードの確保が困難な場所や、狭い道路やアクセス制限のある現場、さらには環境規制が厳しい地域での活用が期待される。
軽量で分割式なので、現場への搬入や設置が容易に。従来の型枠資材は、広いスペースと重機を必要とするが、cv護は最小限の組立作業で済むため、狭いスペースでも効果的に運用が可能だ。
原山社長は「ブロック数が増える大規模プロジェクトでは、従来工法と比べて、省力化とコスト削減効果が生まれるだろう。全体の施工効率が飛躍的に向上する」と期待する。

⑤現場の省人力化を「一番に」考える
cv護は、省人力化、環境負荷軽減、品質確保の三本柱で、従来工法の問題を解決するハーフプレキャスト製品だ。型枠作業の工程をスキップすることで、労働力不足に苦しむ現場の負担を大幅に軽減する。
原山社長は「働き方改革の中で、現場の省人力化は一番に考えなければいけない」とし、「cv護」について「多少のコスト高を考えても導入するメリットは大きい」と評価する。