低桁高・長支間で制約条件下の橋梁計画に対応

鋼コンクリート複合構造「SPC道路橋」

跡ケ瀬大橋(熊本県)SPC合成桁橋

跡ヶ瀬大橋(熊本県)SPC合成桁橋

 橋梁の架け替えや災害復旧では、橋を新設・復旧するだけでなく、河川条件、道路条件、施工ヤード、工期、供用後の維持管理まで含めた比較検討が必要になる。中間橋脚を設置しにくい河川部、桁下空間に制約がある立体交差部、短期間での施工や早期供用が求められる現場では、橋梁形式の選定が施工計画や維持管理計画に影響する。KTB協会(事務局・ケーティービー)が展開するSPC道路橋は、こうした条件下で比較対象となる橋梁形式の一つ。PC桁断面の圧縮側に鋼材を配置した鋼・コンクリート複合構造のPC道路橋で、低桁高化、長支間化、軽量化を図る構造形式が特徴だ。

①低桁高・長支間に対応

 SPC道路橋は、一般的なPC構造に比べて桁の小型・軽量化が図れ、単純桁橋では50〜60m級までの長支間化に対応する。KTB協会は、桁高支間比を1/25〜1/30程度とし、桁高を低減することで、単純桁形式でも長支間化、自重軽減、架設の容易化、桁下空間の拡大、橋面の低位置化、プレキャスト化の容易化が可能になるとしている。橋面高を抑えやすいことから、取付道路の縦断計画や周辺構造物との高さ関係を調整しやすく、桁下条件に制約がある交差部でも計画しやすい。河川橋では、支間を大きく取ることで中間橋脚の削減が見込まれ、河道内施工や基礎工の負担低減を検討しやすくなる。

支間50m主桁断面図の比較

支間50m主桁断面図の比較

 適用場面としては、河川の狭窄部や支川合流部など中間橋脚を設けにくい箇所、道路・鉄道との立体交差部など桁高を抑える必要がある箇所、高水位の影響を受ける河川橋、施工時期に制約のある更新・復旧事業などが想定される。KTB協会は、長支間化による橋脚数の低減、桁下空間の確保、橋面の低位置化を特長に挙げており、河川条件や道路条件など複数の制約が重なる案件で比較しやすい構造形式としている。

断面図

断面図

②プレキャスト化で施工を合理化

 施工面では、主桁を工場製作のプレキャストセグメントで構成することを基本とする。KTB協会によると、セグメントは3個以上の奇数個構成を基本とし、設計基準強度は50N/㎜2以上、水セメント比36%以下、PC鋼材には全素線エポキシ樹脂塗装型の防食鋼材SC-Sの使用を推奨している。加えて、KTB・SPC橋技術検討委員会は「SPC道路橋設計施工指針」や「SPC単純桁橋設計便覧」などの刊行物を用意している。

SPC道路橋関連の刊行図書

SPC道路橋関連の刊行図書

 プレキャスト化は、施工ヤードが限られる場所、出水期の影響を受ける河川工事、交通規制期間に制約がある工事で工程管理上の利点がある。工場製作により部材品質を均一化しやすく、現場での型枠、鉄筋、コンクリート打設などの作業量を抑えやすい。KTB協会によると、支間長30m、40m、50mを想定したセグメント例を示しており、50m級では7セグメント構成、セグメント当たり約20〜25tを推奨している。分割搬入と現地接合を前提とした計画が可能なため、現場条件に応じた施工計画を組みやすい。上部工の軽量化は、橋脚や橋台など下部工への負担低減を検討しやすくする要素にもなる。

施工手順

施工手順

③維持管理を見据えた構造

 維持管理面では、多径間橋で主桁の連結化が可能で、伸縮装置を少なくできる点が特徴となる。橋梁では、伸縮装置や支承部が損傷・劣化の要因になりやすく、補修時には通行規制や更新費用が発生する。連結化による目地削減は、漏水や塩分侵入の抑制、支承・伸縮装置まわりの維持管理負担軽減につながる。橋梁更新では、建設時の施工性だけでなく、供用後の点検・補修のしやすさまで含めて比較する必要があり、SPC道路橋はその観点からも検討対象となる。

 防食PC鋼材には「SCストランド」を用いる。SCストランドは、PC鋼より線を構成する心線・側線の外周面それぞれにエポキシ樹脂被膜を形成した全素線完全防錆型のPC鋼材で、KTB協会では、内部を含め防錆処理されていない部分がないこと、従来の定着具や治具を使用できること、疲労試験400万回や2000時間の塩水噴霧試験結果を公表している。塩害や凍結防止剤の影響を受ける環境では、こうした防食仕様も長期耐久性を検討する材料になる。

エポキシ樹脂塗膜鉄筋を採用

エポキシ樹脂塗膜鉄筋を採用


④県内実績・飯田市中橋

 長野県内では、飯田市南信濃和田の中橋でSPC道路橋が採用されている。中橋は令和3・4年度過年発生土木施設補助災害復旧事業で架け替えた橋梁で、復旧延長98m、橋長83.5m、幅員5.2m。上部工はPC2径間連結プレキャストT桁橋、下部工は逆T式橋台2基、橋脚工は重力式橋脚1基としている。災害復旧事業として早期完成が求められる中、河川条件や桁高制限などの施工条件にも対応できる構造として採用された。

被災直後の中橋

被災直後の中橋

復旧した中橋

復旧した中橋

 老朽化した道路橋の増加や災害対応を背景に、橋梁更新需要は今後も継続するとみられる。橋脚設置に制約がある河川橋、桁高を抑える必要がある交差部橋梁、工程短縮が求められる復旧事業では、建設時の施工性と供用後の維持管理を合わせて比較する必要がある。SPC道路橋は、桁高、支間、施工方法、耐久性、維持管理を一体的に整理できる橋梁形式の一つとして、こうした複数条件が重なる案件で比較対象になりそうだ。

ケーティービーは、「橋脚設置の制約、桁高制限、工程短縮、維持管理負担の軽減など、複数の条件を同時に満たす必要がある現場で、SPC道路橋の優位性が発揮しやすい。100年橋梁を目指し、橋梁更新や災害復旧分野を中心に提案を進めたい」としている。

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株式会社ケーティービー長野営業所

長野市栗田1020-6 ステラビルBY 4階
TEL:026-268-1617

 


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